木枠やパネルを用意する。布を張る。ランダムに色を乗せる。偶然できた表象を作品としてそのまま乾燥させる。私の制作。
ランダムに色を乗せる。布の切れ端に絵の具を乗せ、油絵の具の油分をウエスで拭き取る様に支持体に絵の具を引きずる。画面と切れ端がくっつき前のめりになりながら指から切れ端が離れる。接着した状態をそのままにする。
既にある画面の関係性を覆い隠す様にランダムに色を乗せる。未乾燥の盛り上がった絵の具のマチエールに布の切れ端を乗せ画面にくっつける。絵の具と同じ用い方で画面の一部分を布で覆い隠す。それらの上から絵の具で更に覆い隠す。一度画面にくっついた布を画面から剥がす。布によって覆い隠したことで付着した絵の具と共に、布の裏地を裏返し新しい画面にさせる。表面だったものには画面を無視して新たに覆い隠した絵の具が付着しているのでそれを用いて再び画面と接着させる。基底材に新たに絵の具が付着する。これらの制作行為を繰り返す。
既にある画面の関係性を無視する様に絵の具で下層の画面を覆い隠す。支持体に張られた布を裁断する。穴を開ける。空いた穴に布を翳す。絵の具で接着させる。絵の具で隠蔽しながらカッターや鋏で画面を裁断する。裁断して画面から離れた布を再び画面に接着させる。これらの最中に絵の具を用いてランダムに下層を覆い隠しつつ切り離した布の裏、表両方を検討しながら画面に登場させる。
こうしてできた画面が〜の様に見える状態として偶然私と出会ったことにこの上なく有難いと感じる。私が無為に放った一つ一つの制作行為の痕跡に私が何かを感じたことで、一つの制作行為毎に画面から筆を離して出会うたびに新たな表面(その様な状態の新品のキャンバス)としてそれらとまた関わることで私を異なる場所へ連れて行ってくれる。一つ一つの時のキャンバスにはじめましての挨拶を行いその繰り返しで生を終える。一つ一つに答えを出しながら来るべき遭遇と出会い続け人生を終える時、に出会う光景のような説得力を完成した絵画に感じる。私は、人の生における数々の出会いや遭遇と同じく画面との遭遇に対して挨拶を交わし、進行中の自らの生を様々な入り口から終点までのシミュレーションを制作で行っています。